すべての女性を祝福

子どもとの外出を
もっと便利で楽しく

起業家・逢澤奈菜さんと「iiba」の挑戦。

小さな子どもを連れて外出することは、ちょっとした冒険に繰り出すようなものです。子どもとの至福の瞬間に出会える一方で、ベビーカーでスムーズに移動できるルートはどれか、エレベーターの有無や道幅、授乳・おむつ替えの場所はどこかなど、その道中では気の抜けない不安要素もつきまといます。情報を収集し、把握することが煩雑なため、外出が億劫で、閉じこもりがちになってしまうこともあり、子育てサポートアプリ「iiba」を開発する逢澤奈菜さんも、そのような悩みを抱えていました。

「iiba」を開くと、��ップ上に実際にその場を訪れた人のコメントが表示され、特長や注意点など、外出時に役立つ貴重な情報を得られます。

このストーリーでは、育児に奮闘する日々の中で生まれたアイデアを実現するために、自らアプリ開発を学び、さらには起業して本格的に事業展開するに至った紆余曲折を逢澤さんに伺いました。


アプリ開発への挑戦を 後押しした2つの転機

京都府で生まれ育ち、子どもの頃は陸上競技に打ち込み、動物好きで獣医になりたかったという逢澤さん。将来は人を幸せにできる仕事につきたいという思いを抱いていましたが、起業してCEOになるという未来は到底思い描けなかったと言います。

ソファで授乳をしていて、手元のマップで子育てのための情報が全部わかるサービスがあればいいのに、と思ったんです
逢澤奈菜さん

逢澤さんの転機となったのは、20歳の時、ギラン・バレー症候群を患ったこと。末梢神経の障害によって、手足がしびれたり、力が入らなくなったりする病気です。

「全身麻痺で約2か月間、呼吸が困難な状態に陥りました。その経験を通じて人生観が大きく変わり、健康で生きていることの意味を深く考えるようになりました」。死に直面し、「まだ何もやり切っていない」と感じたことが、その後の逢澤さんの人生を突き動かすこととなります。

また、第一子の出産も大きな転機だったと振り返ります。大学卒業後、すぐに就職、上京、結婚、出産と、目まぐるしいライフイベントを経験し、パートナーは仕事で多忙を極めるなか、一人赤ちゃんを抱えながら強い焦燥感に駆られたと言います。「このまま子育てに専念していたら、あっという間に20年くらい経ってしまう」と。

今しかできない子育てをまっとうしたいという気持ちと、社会に役立つことがしたいという願望を抱いていた逢澤さんは、子育てと事業の両立を決意。そして、子連れで外出することの困難を痛感していたことから、分散あるいは可視化されていなかった子育て関連情報をワンストップで確認できるアプリ開発に着手します。

「ソファで授乳をしていて、手元のマップで子育てのための情報が全部わかるサービスがあればいいのに、と思ったんです。当時、保育園や習い事のことで頭がいっぱいで、そのような情報がまとまっていればいいのにって。まだないなら、自分で作る。ただ、理想を実現するには、たくさんの人や会社を巻き込む必要があるので、事業の基盤を作るために起業する道を選びました」

「実は4割くらいパパユーザーが投稿してくれています。パパは結構お出かけ場所を探す印象があります」と逢澤さん。

逢澤さんは自らアプリ開発を学び、2023年10月に「iiba」のベータ版を公開。そして、2024年2月に正式版をApp Storeでリリースしました。以来、「iiba」には300人のアンバサダーと一般ユーザーから多彩な“いい場所”に関する情報が寄せられています。その情報の信頼性は、どのようにチェックしているのでしょうか。

「ユーザーには、場所の特長をタグで選んでもらい、評価についてはランク形式で入力してもらう形にしました。書き込む選択肢を限定しているので、ある程度整理された情報になります。あと、私たちの方で一定のスクリーニングをしていたり、ユーザーから閉店など新たな情報が上がってきたりするので、正確な情報になるように気を配っています」

現在は比較的都市部に情報が集中している印象で、「まだまだ道半ば」と逢澤さん。より良い社会実現のためにもさらに事業を加速させたいと意気込む逢澤さんの背中を押すのは、何よりユーザーからの反響だと言います。

「たくさん投稿してくれるユーザーさんに話を聞いたんです。すると、『iiba』に書き込むことで、家族の思い出が可視化されて記録になる。夫婦間で『これ登録した?』みたいな会話が生まれて、とても楽しいというようなことを言ってもらえて、すごく感動しました」

「子育ての課題は多岐にわたります。モノを選ぶとか、学校や習い事など、様々な情報をアプリから瞬時に手に入れられるようにしたい。他にも、家族の思い出づくりに便利な機能も強化していきたいと思っています。最初は一人で作っていたアプリですが、今は非常に優秀でビジョンに共感してくれるメンバーが集まりました。このチームで、子育てのプラットフォームになるようなアプリを目指していきたいです」

女性起業家としての挑戦

「子育てしやすい社会を目指し、新たな子育てインフラを構築する」というビジョンを掲げて、2022年5月に株式会社iibaを創業し、起業家としても注目されている逢澤さん。まだ日本では少数派といえる女性起業家として、資金調達や事業展開を進めるのは決して簡単ではなかったと振り返ります。

「私の場合ですが、投資家や企業の役員などから、どうしても頼りなく見られてしまうことがありました。そのようなバイアスを打ち破り、事業を推進するのは、特に実績がない初期の頃は大変でした。でも、例えばソーシャルネットワークのフォロワーを1万人規模まで増やすことを宣言・実行して、小さなことから実績を積み重ねていくことで、徐々に信頼を得られるようになりました。『この人はやり切るんだ』と信頼を得て、最初の投資を受けるまでは情熱と行動で乗り越えていきました」

そして、今、自己実現を目指して奮闘している若い世代の女性に向けて、逢澤さんは以下のようなメッセージを投げかけます。

「私は常々、想像できることは絶対に実現すると思っています。やりたいこと、実現したい世界を解像度高く想像してみてください。理想が大きければ大きいほど大変ですけど、想像できることは、絶対に達成していける。なぜなら、そこから分解していくと、やるべきことが見えてくるので」

「何かを始めるときに、子育てが落ち着いてからとか、もっとキャリアを積んでからというようなことを思いがちです。特に女性はライフイベントが多いので迷うこともあると思います。でもたった数年で、人生は大きく変えることができます。変えるなら早いほうがいい。今日がいちばん若いので、ぜひ一歩踏み出してもらえたらと思います」

前向きな変化を生み出す
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