3月は女性史月間

更年期の
女性たちに寄り添う

セルフケアとコミュニティの新たな形を提案するアプリ「JoyHer」。

私たちのYStory という会社名には、「あなたのストーリーを教えてください、私たちは側にいます」という意味が込められています
Sherry Shiさん

多くの女性が35歳以降に体験する更年期との向き合い方を変えることで、健康と豊かな暮らしをサポートしていくこと。また、女性たちが自信を持って仕事や家庭で活躍できる社会を作っていくこと。

2023年に配信開始された女性のための更年期セルフケアアプリ「JoyHer」は、そうした目標を掲げながら、すでに6万人以上のユーザーにダウンロードされて好評を博しています。

このインタビューストーリーでは、デベロッパのYStoryを立ち上げて日本で活動する2人の女性、Janet YuさんとSherry Shiさんにその取り組みと想いを話してもらいました。

様々な症状にケアとサポートを

「一般的に女性の更年期というのは、生理が来なくなって閉経する前後5年の合計10年間に、体内のエストロゲンというホルモンが激しく変動している状態のことを指しています」とJanetさんは説明します。

Janetさん「更年期の大きな特徴は、200〜300種類もあると言われるほど症状が多様で、年齢、季節などによっても変わることです。先月はめまい、今月はホットフラッシュ(顔や身体の火照りやのぼせ、発汗など)といったようにコロコロと変わっていくので、対処がすごく難しい。また、個人差がとても大きいので、周囲に同じくらいの年齢の人がいたとしても、なかなか話が通じないことも多いのです。その結果、自分の不調が更年期の症状なのかわからず、不安な気持ちのまま過ごしている人が多いと言われています」

「JoyHer」の大きな特徴は、更年期に訪れる変化や不調の多様さに細やかに対応していることです。ユーザーは出血の有無やホットフラッシュ、めまいといった20項目以上の中から、その日の症状と程度を選んで記録できます。また、仕事の忙しさや食べ過ぎといった要因の心当たりや、ヨガやマッサージのようなセルフケアの取り組みまで記録できるので、振り返って把握するのに便利です。自分が更年期かもしれないと思ったら、まず使ってみることでおおよその判断に近づけるかもしれません。

リストに掲載のない症状は、自分で項目を入力して記録できます。

日々の記録を細かく入力していくことで、「JoyHer」はAIを用いた健康の改善案を30日ごとにヘルスプランとして提案してくれます。食事や入浴のコツなど、ユーザーの様々な不調を和らげるための参考になる内容です。

日本での出会いから起業へ

中国出身のJanetさんとSherryさんは、コンサルティング会社の同僚として日本で出会い、2人でYStoryの立ち上げを決めたと言います。更年期やヘルスケアの社会課題解決に挑むことになった背景には、それぞれの想いや体験が大きく関わっていました。

Janetさん「私は13年前に留学生として京都大学に来ました。アルゴリズムやデータ分析が得意で、卒業後はデータサイエンティストとして働いていたのですが、もっとビジネスで社会的な課題解決をしたいと思ってコンサルティング会社に転職し、そこでヘルスケア業界に関わることになりました。

当時のプロジェクトの中に更年期に関するものがあって、ユーザーのインタビューや調査をやってみると、更年期の人は症状が一人ひとりで全然違っていたのです。その結果、もっとパーソナライズされたヘルスケアが必要だと感じました。そこでビッグデータやアルゴリズムの知見を活かして、一人ひとりに合わせて症状を改善できる取り組みができないか、と考えたのです」

Sherryさん「私はシンガポールの大学院を卒業してから日本で働き始めて、Janetと同じコンサルティング会社にいた時に、働きすぎが原因で30代半ばで生理が止まってしまう経験がありました。早期更年期という可能性を指摘されたのですが、その時は孤独や不安を感じて、情報も少なく、誰に相談したらいいか分からずに迷っていました。

その時の経験があって、YStoryを設立した時も、人を大事に、女性を大事にして、社会をより良くしていきたいという気持ちを強く持っています。日本や中国だけでなく、アジア社会の女性は、誰かの娘、誰かの彼女、誰かの奥さん、誰かのママ、のように自分が主語にならない状況を受け入れて生きていたり、自分の痛みを我慢していたりすることが多いと思っています。 YStory という会社名には、そんな女性たちに対して“Tell us your story, we will be with you(あなたのストーリーを教えてください。私たちは側にいます)”という意味が込められているんです」

ユーザーの女性たちと共に

「JoyHer」が力を入れているのが、同じ悩みや症状を持つユーザー同士がつながったり、話し合ったりできるコミュニティ機能です。実は、開発当初のアプリにはこの機能がなく、ユーザーの声で実装することになったと2人は言います。

Janetさん「100人くらいのユーザーにテストをお願いした時に、あくまでも匿名性を維持した上ですが、『他の人の経験を見たい』とか『ちょっとした質問を聞いてみたい』という強い���ーズがあったので、コミュニティ機能を加えることにしました。ただ、それでも直接は意見を言いづらい部分もあると思ったので、投票やクリックだけで簡単にリアクションできる機能を提供して、なるべく参加しやすいように配慮をしています」

コミュニティ機能では、「共感します」「応援します」といった書き込みをワンタップで行えるように工夫されています。

Sherryさん「アプリの開発もデザインも、ユーザーとコミュニケーションを取ってフィードバックを受けながら、終わりがない旅の中で回していく感じだと思っています。『JoyHer』の背景にある考え方は、他の企業が提供するものよりもパーソナライズされているということ。それを、機能やデザインの面で表現していきたいと思っています」

挑戦すること、自分を愛すること

現在では日本国内向けに個人ユーザー向けと企業ユーザー向けの「JoyHer」を展開しているYStoryですが、今後はさらに幅広い展開も考えていると2人は語ります。

Sherryさん「まだ具体的な計画はないのですが、今後は英語版を出すとか、中国語版を出すとか、グローバルに展開して欧米やアジアの女性もサポートできたらと思っています。あとは、更年期のイメージも変えたいですね。どうしても暗さや辛さのイメージがあるのですが、成熟のライフステージとして捉えて、もっと温かくて明るいものとしてポジティブに向き合いたいという気持ちがあります」

Janetさん「2025年には、『JoyHer』が米国で最大の病院であるMayo ClinicのAccelerate Programに採択されました。米国の著名な医師の先生も、更年期に対して今は米国でも薬しか主な治療方法がないとおっしゃっていたので、抹茶やお寿司が米国でブームになったように、日本発のパーソナルケアの取り組みがYStoryを経由して外国にも広がったらいいと思っています。日本で蓄積したデータと知見を活かして、どんどん海外にもチャレンジしていきたいです」

もし、JanetさんとSherryさんが「JoyHer」の開発を通じて取り組んできた社会的課題の解決や、女性たちを支えて勇気づけるような活動にチャレンジしたい人がいたら、何を伝えたいと思いますか。そう尋ねると、前向きに進むためのメッセージを言葉にしてくれました。

Sherryさん「どんなライフステージでも、勇気を持ってチャレンジしてみてください。それから、私たちのアプリの目的もそうですが、もっとみんなが自分を愛することができるといいと思います。いろいろな理由で自分の時間や幸せや楽しみを犠牲にしている部分があるかもしれませんが、もっと自分をケアしてみてください」

前向きな変化を生み出す
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