【山梨・ミュージアムホテルキーフォレスト】満天の星とキース・ヘリングに出合う、八ヶ岳南麓の隠れ家
東京都心から約2時間半、八ヶ岳南麓の森に佇む複合リゾート「小淵沢アート&ウェルネス」。その中心となるのが、わずか6室のスモールブティックホテル「ミュージアムホテルキーフォレスト」だ。不規則な台形の窓が並ぶコンクリート打ち放しのファサードは、ミラノ国際博覧会日本館も手がけた建築家・北川原温によるもの。建物そのものが、ひとつのアート作品のように屹立している。源泉かけ流しの貸切露天風呂は、晴れた日には満天の星を仰げる特等席だ。
客室は「太陽」「風」「水」など、部屋ごとに山梨の自然から着想を得たテーマを設けている。壁材や石材、家具まですべて異なり、ひとつとして同じ部屋はない。縄文文化の栄えた地であるこの土地の記憶を伝える「UTSUHO」「MITSU」といった縄文語の客室名もある。
隣接する「中村キース・ヘリング美術館」の存在も見逃せない。宿泊者は無料入館券で、滞在中いつでも世界唯一となるキース・ヘリングの美術館を訪ねることができる。館内には他のアーティストの絵画や彫刻も点在。ゲスト専用バーには世界のヴィンテージウイスキーも並ぶ。森の中でアートに囲まれる滞在は、忘れ難い一夜になるはず。
ミュージアムホテルキーフォレスト
住所/山梨県北杜市小淵沢町10248-16
Tel./0551-36-8755
・全6室。貸切露天風呂は宿泊者専用(予約制)
・中村キース・ヘリング美術館は宿泊者無料(一般¥1,500)
https://keyforesthotel.com/
【群馬・SHIROIYA HOTEL】光る配管が浮かぶ吹き抜けで憩う。前橋のアート・デスティネーションへ
江戸期創業、300年の歴史を誇る老舗旅館を前身とし、2020年に再生を果たした群馬・前橋の「SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)」。6年半もの時間をかけて廃業した建物を大胆に改築し、さらに旧利根川の土手を思わせる新棟「グリーンタワー」を建てたのは、建築家・藤本壮介だ。
旧館を改築したヘリテージタワーは、4階建ての中央が吹き抜け。天窓から自然光が降り注ぎ、17の客室をつなぐ階段と通路が縦横無尽に交差する。その吹き抜けの空間に浮かぶのが、レアンドロ・エルリッヒによるコミッションワーク《ライティング・パイプ》。かつて配管が通っていた穴の跡から着想した作品で、21時を過ぎるとLEDの色がゆるやかに移ろい、吹き抜けを幻想的に染めていく。
客室そのものが作品だ。ジャスパー・モリソン、ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、そして藤本壮介が手がけた4つのコンセプトルームは、いずれも世界にここだけ。ほかの客室にも、ライアン・ガンダー、塩田千春、高谷史郎、竹村京らの作品が飾られ、ヘリテージタワーとグリーンタワー、2棟あわせた25室すべてが異なる表情を持つ。昨年は隣接する建物に、キッチンと洗濯機付きの長期滞在向けレジデンスルーム3室も誕生。mina perhonen(ミナ ペルホネン)監修の部屋もお目見えしている。
館内にはさらに15人の作家の作品が点在。毎日、夕方と翌朝に開催される宿泊者限定のアートツアーで巡ることもできる。緑の丘に埋め込まれた多目的空間「真茶亭」は、現代美術作家・杉本博司と建築家・榊田倫之による「新素材研究所」が手がけている。いま注目のアート・デスティネーション前橋で、アートにたっぷり浸ってみては?
SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)
住所/群馬県前橋市本町2-2-15
Tel./027-231-4618
・全25室(うちコンセプトルーム4室)
・アートツアーは宿泊者限定
https://www.shiroiya.com/
【京都・ザ・リッツ・カールトン京都】源氏物語の世界へ。400点超のアートに包まれる鴨川の宿
鴨川のほとり、東山三十六峰を望む「ザ・リッツ・カールトン京都」を貫くテーマは「源氏物語」だ。エントランスから客室、レストラン、スパに至るまで、館内に収蔵された美術品・工芸品は約409点。ロビーは光源氏の理想の住まいであった六条院をモチーフに構成され、空間全体に平安貴族が装束の色を重ねた「かさね」の美意識が息づいている。
コレクションを手がけたのは、大地の芸術祭などを手がけるアートフロントギャラリー。名和晃平や大巻伸嗣、内田鋼一、福本潮子ら、現代美術から工芸まで、京都にゆかりの深い作家の作品を惜しみなく配した。ロビーに入ってすぐのところでゲストを迎えてくれるのは、琵琶を無数のクリスタルビーズで覆った名和晃平《PixCell-Biwa(Mica)》。光を纏って輝く姿は、王朝文化の記憶を現代へと呼び覚ます。フロント横には、ベネチアングラスで嵐山の竹林を模した三嶋りつ惠の《月の光》が飾られている。
うれしいのは、宿泊者限定で無料のアートツアーが用意されていること。厳選された20点ほどを解説付きで鑑賞すれば、ただ前を通り過ぎていただけかもしれない作品が、物語を帯びて立ち上がってくる。日本文化の層の厚みを、泊まりながら味わい尽くしたい。
ザ・リッツ・カールトン京都
住所/京都市中京区鴨川二条大橋畔
Tel./075-746-5555
・館内アートツアーは無料(宿泊者限定・事前予約制)
https://www.ritzcarlton.com/ja/hotels/ukyrz-the-ritz-carlton-kyoto
【京都・すみや亀峰菴】現代美術と伝統の技が交わる、湯の花温泉のアートルーム
京都・亀岡、湯の花温泉の老舗旅館「すみや亀峰菴」が挑んだのは、旅館という日本の伝統的な空間と現代美術の融合だ。構想を手がけたのは、ヴェネチア・ビエンナーレのアペルト部門を日本人で初めて受賞し、犬島精錬所美術館などで知られる現代美術家・柳幸典。ロビー兼ギャラリー「百代(はくたい)」のエントランスには、北斎《神奈川沖浪裏》を砂絵で描き、蟻に掘り崩させるこの宿のための作品が常設展示されている。
その世界を一晩、心ゆくまで体験できるのが、140平米の露天風呂付きスイートルーム「呼風(こふう)」だ。重厚な鉄の扉を開くと、天へ向かう隧道と地へ向かう隧道がゲストを迎える。独創的な露天風呂も圧巻。天の間には、透明な立方体の浴槽が夕暮れに虹のプリズムを描き、地の間には左官職人・久住章による大地に抱かれるような浴槽と、陶芸家・石井直人の破れ壺が焔とともに佇む。和紙職人・ハタノワタル、帯匠・十代目山口源兵衛ら、京丹波の匠たちとの協働が生んだ空間は、それ自体がひとつの作品だ。湯に身を委ねながらアートの一部になる。そんな稀有な一夜を、体感したい。
すみや亀峰菴
住所/京都府亀岡市ひえ田野町柿花宮ノ奥25
Tel./0771-22-7722(受付9:00〜22:00)
・全25室。アートルーム「呼風」は140平米の露天風呂付きスイート
・ギャラリー「百代」は宿泊者専用
https://www.sumiya.ne.jp/
【広島・SIMOSE ART GARDEN VILLA】坂茂の名作別荘に泊まる。瀬戸内のアート・オーベルジュへ
2023年4月、宮島を対岸に望む広島・大竹の海辺に開業した「SIMOSE ART GARDEN VILLA(シモセ アート ガーデン ヴィラ)」は、約4.6haの敷地に、美術館、フレンチレストラン、庭園、そして10棟のヴィラが点在するアート・オーベルジュだ。“海辺の建築作品に泊まる”をコンセプトに掲げ、瀬戸内の風景に溶け込むように、建築が作品として配されている。
すべての建物を手がけたのは、建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞受賞の建築家・坂 茂。併設の下瀬美術館は、水盤に並ぶ可動展示室が話題を呼び、2024年に国際的な建築賞であるヴェルサイユ賞の「世界で最も美しい美術館」を受賞した。
ヴィラは、木立に囲まれた「森のヴィラ」と、水盤に面した「水辺のヴィラ」の2エリア各5棟で計10棟。「森のヴィラ」のうち4棟が、坂茂がこれまで手がけた別荘建築の中から自ら選び、この地で新たに再構成したものだ。紙管を用いた「紙の家」や、家具が構造を支える「家具の家」など、建築史に名を刻む名作を、たっぷり一晩かけて体感できる。海へ抜けるアートの庭で、瀬戸内に上がる朝日と庭園を彩る季節の花々とともに、建築とアートに包まれる時間が待っている。
Simose Art Garden Villa(シモセ アート ガーデン ヴィラ)
住所/広島県大竹市晴海2-10-50
Tel./0120-907-090
・全10棟(森のヴィラ5棟/水辺のヴィラ5棟)
・宿泊は13歳以上(「家具の家」のみ10歳以上)
・JR大竹駅・玖波駅より車で約10分。宿泊者は送迎あり(宿泊プランによる、要予約)
https://artsimose.jp/villa/
【香川・ベネッセハウス】自然・建築・アートの共生。安藤建築とアートに包まれる直島の休日
瀬戸内海に浮かぶアートの島、直島。世界的な“瀬戸内の旅ブーム”の源流ともいえるこの島で、1992年に美術館とホテルが一体となった施設として開館したのが「ベネッセハウス」だ。「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに掲げ、安藤忠雄が設計を担当。長いスロープや階段をたどる移動、切り取られた開口部から注ぎ込む外光など、内外の現代アートを身体全体で感じられるよう構成されている。
宿泊棟は4棟。美術館の中に泊まる「ミュージアム」、モノレールで丘の上へ向かう全6室の「オーバル」、緑の芝生に点在する屋外作品を望む「パーク」、波音に包まれる「ビーチ」と、それぞれに異なる表情を持つ。なかでも「オーバル」の客室には、アーティストが制作したドローイングが飾られ、入館できるのは同カテゴリーに宿泊するゲストのみ。エクスクルーシブなアート体験が約束されている。
美術館「ベネッセハウス ミュージアム」を夜遅くまで鑑賞できるのは、宿泊者の大きな特権だ。杉本博司《タイム・エクスポーズド》をはじめとする作品と、静寂のなかで向き合える至福の時間が待っている。
ベネッセハウス
住所/香川県香川郡直島町琴弾地
Tel./087-892-3223
・宿泊は4棟(ミュージアム/オーバル/パーク/ビーチ)
・「オーバル」「ビーチ」は宿泊者のみ入館可。「ミュージアム」、「オーバル」、「ビーチ スイート ダブルは6歳以上より宿泊可。詳細は公式サイトで確認を
・レストラン、カフェ、ショップは宿泊者以外も利用可
https://benesse-artsite.jp/stay/
Text: Aya Hasegawa Editor: Hanae Iwasaki
READ MORE

























